∽*∽*∽*∽*∽ ショート・ストーリー ∽*∽*∽*∽*∽
どこまでも広がる青い空、エメラルド・グリーンに輝く美しい海、白い砂浜には、眩しい日差しが降り注ぎ、爽やかな潮風が、デッキチェアーでまどろむ私の身体をすり抜けていった。 私はグアム島で、束の間の休息を楽しんでいた。 「サンオイルを塗って下さるかしら?」 隣のデッキチェアーにいた水着姿の美しい女性が、私にそう話し掛けてきた。 「ええ、いいですよ」 私はそう言うと、その女性の素肌に、サンオイルを塗り始めた。 なんてラッキーなんだ! これは、夢ではないか? だが、頬をつねると痛い。これは夢ではないのだ。 「貴方にも、塗って差し上げますわ」 その美しい女性はそう言うと、私の身体にサンオイルを塗り始めた。 実にいい気分だ。このまま時間よ、止まってくれ! 私は、そう思いながら、この後の展開に胸を躍らせた。 とその時、遠くから、私の名を呼ぶ声が聞こえてきた。 「おーい、出発するぞ!」 それは、聞き慣れた同僚の声であった。 そうだ! 社員旅行で、グアム島に来ていたのだ! しかも、今日は日本へ返る日だった! 私は、その美しい女性に未練を残しつつ、水着姿のまま、観光バスへと走っていった。 |
Copyright(C) Kenichi Tanabe All Rights Reserved.